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  • ノーベル生理学・医学賞の栄誉 日本人が受賞

    今年のノーベル生理学・医学賞に、東京工業大学栄誉教授である大隅良典氏の受賞が決定した。

    受賞内容は、生物が細胞内で自身のタンパク質を分解・再利用する「オートファジー(自食作用)」と呼ばれる現象の解明によるものである。オートファジーは細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質を合成した際にタンパク質をリサイクルしたり、細胞のがん化抑制したりと、多くの細胞内の機能に関与していることが知られている。

    大隅氏が受賞したノーベル生理学・医学賞は、6つあるノーベル賞の中で、生理学および医学の分野で最も重要な発見を行った人物に与えられる賞であり、日本人は昨年の大村智北里大学特別栄誉教授に続いて2年連続の受賞となった。

    日本人のノーベル賞受賞は生理学・医学賞だけでなく、物理学賞や化学賞でも続いており、日本の基礎研究を支えてきた多くの研究者の功績が認められてきている。最近ではiPS細胞の作製で知られる山中伸弥教授の功績が大きくクローズアップされ、多くの国でも再生医療への応用研究が広く進められている。しかし、こういったすぐに活用されるような研究ばかりではない。今回のオードファジーの存在自体はかなり前から知られていたが、やっと今になり受賞に至っている。2008年に化学賞を受賞した下村教授の「緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と生命科学への貢献」については、物質自体は1960年代に既に下村氏によって発見・分離精製されていた。受賞当時にはすでに遺伝子組み換えの研究において一般的に利用されており、大学生が実習で利用するレベルまで浸透していた。昨年同賞を受賞した大村栄誉教授は寄生虫によって引き起こされる感染症に対する治療法として、土壌細菌が作り出す物質を発見し寄生虫への有効性を確認したのが1975年である。

    日本の研究者の発見により生物学や化学分野など、多くの分野で基礎研究が進み、新薬の開発など人々の生活に活かされている。

    昨今の風潮として、「すぐに活用できる技術」に注目が集まりやすい傾向にあるが、応用技術も全て基礎研究があって初めて確立される。それを忘れ、すぐに使えそうなものにお金がながれていくことは、せっかく花開いてきた日本の科学技術分野を荒廃させることに繋がりかねない。

    「すぐに使えるものは、すぐに使えなくなってしまうものでもある」という言葉がある。科学技術も学業も、一朝一夕で身につくものではない。GFPを発見した下村氏は来る日も来る日も海でクラゲをとり、発光する物質が何であるのか、それをどうやって取り出せるのかに苦心していた。それを見た周囲の人からは、それが何の役に立つのかと思われたこともあるだろう。しかし、その探求心が数十年の時を経て、今では遺伝子工学に大きな影響を与えている。

    現在は今すぐ使えるものがもてはやされがちだが、何の役に立つのか分からないものが、やがて社会的に意味があるものに変わることもよくあることだ。親は子どもが持つ探求心を大切にして、納得いくまで調べることを許してあげてほしい。もしかしたら、将来のノーベル賞受賞者になる可能性を、子どもは誰でも秘めているのだから。