文部科学省の発表によると、2016年の大卒者における就職率は前年と比べ2.1ポイント増加し74.7%となった。男女別の就職率は男子で69.7%、女子で80.7%と女子の方が10ポイント以上高い数値となった。大卒就職率は2008年のリーマン・ショックの影響により平成22年には60.8%まで下降していたが、平成23年より改善しそれから6年連続で上昇した結果となった。
正規雇用者の割合も増加傾向にあり、今年の春は前年と比較して2.4ポイント増加しており71.3%が正社員として雇用されている計算になる。これは過去最高の数値である。就職以外の進路として、大学院や他大学などの各種学校への進学が12.1%、アルバイトなどの一時的な仕事への就業者が1.8%、海外ボランティアや家事手伝いなど進学・就職のいずれもしない者が8.7%となっている。
大学卒業者の多くが正規社員として雇用されることが分かった今回のデータであるが、別のデータからは日本の雇用の別の側面を見ることができる。厚生労働省が発表している「就業形態調査」によると、2015年12月の発表では、民間事業者に勤める者の40.5%が非正規社員であるというデータが出ている。非正規社員には契約社員やパートタイム労働者、派遣労働者といった雇用形態が含まれている。2014年発表のデータでは非正規の割合は全体の37.4%であったことから、1年間で3.0ポイント以上上昇していることが分かる。このデータは全労働者世代の情報であり、特に65歳以上の非正規の雇用が増えていることから増加傾向にあるようだ。しかしながら、25~34歳の非正規労働者のうち28.4%が「正社員になることができず、やむなく非正規雇用となっている」という情報もあることから、正社員になりたいがなれない若年層も4人に1人はいることが分かる。そして非正規社員から正社員へ移るのは高い壁がある。総務省の調査によると、非正規雇用形態から正社員へ転職できた割合は24.2%となっている。こちらも転職希望者の4人に1人と難しいのが現状だ。
以上のデータを簡潔にまとめると、大学卒業資格を持っていれば多くの場合正社員になりやすい。しかし、一度非正規雇用で雇われると正社員になるには高いハードルが待ち構えている。高卒での非正規雇用者の割合は、男子で20%超、女子に至っては60%近い数字となっているデータもある。低学歴であればあるほど非正規雇用者となる場合が多く、女子にその傾向は顕著に表れていることになる。
学歴は就職にとって非常に重要なファクターのひとつである。良い学校へ行けば良い就職先に恵まれることもある。非正規雇用者と正社員では年収において約300万円ほどの開きが出るというデータもあり、生涯賃金から考えると1億円近い差が生じることも十分ありうる。
非正規雇用については社会保障の面でも会社からサポートを受けられないなど賃金以外の格差もあるが、実際の業務としては正社員と差が無い職場も見受けられており、同じ労働をさせながら低賃金で雇える非正規雇用は今後も増加することが考えられる。
非正規雇用になると抜け出すことが難しいこともあり、しっかりと学歴を積んで正社員で新卒入社することが現在の日本では重要かもしれない。子どもに安定した未来を与えたいと考えるのであれば、最低限大学に入れる学力を身に着けさせることが有効である。夏期講習も佳境を迎え、これから受験熱が高まるシーズンとなる。部活も引退してこれから学業に本腰を入れる生徒も多くいる事だろう。学業に遅すぎるということは無いので、今からでもしっかりと受験勉強に注力し、より良い未来を切り開いてもらいたい。