教科という枠を超えて、生徒自身が携帯・タブレット端末を使って学ぶ公立校がオランダに誕生しました。
教科書も用いず、「コーチ」と呼ばれる教師たちは助言と支援に徹している。
この学校はルールモント市の「アゴラ中等学校」で2015年8月に開校した。
日本で言う中学・高校に相当し、生徒は4~6年間学ぶとのこと。
週5日計35時間ある授業のうち、外国語や美術、体育などが15時間で、それを除く20時間は個人やグループで端末を使って学び、
将来のそれぞれの目標に向かって、各教師と相談して決定した学習活動に取り組む。
「生徒が自ら学び、個性を伸ばす学校を開きたい」
という思いを国や地元の教育委員会などに働きかけ続け、遂に認められた。
尽力したのは現在同校で副校長を務めるシェフ・ドゥラマンさん(61)ら教師たちである。
そして、同校に魅力を感じた12~13歳の男女34人が入学した。
生徒たちには学年はなく、学習はマイペースで進む。
教師たちは生徒の端末の利用履歴を見て進み具合をチェックする。
なお、テストは行わない。
昨年12月中旬のある日、外国語の授業が終わると生徒たちはテーブルを囲んで座り、端末を使用して調べものや文章を書いたりし始めた。
エボラ出血熱についてインターネットで検索していたティジャニ君(12)が「どうすればエボラウイルスはいなくなるの? オランダの専門家の意見を調べてみたけれどよく分からない」と頭を抱えた。
教師のグイド・バンダイクさん(41)が「専門家は日本や中国にもいるよ。探してみたら?」とアドバイスすると、ティジャニ君の目がパッと輝いた。
バンダイクさんは「好奇心を刺激することが重要。興味がわけば、家でも勉強する」と語る。
中には宇宙船に興味を持ち、米国の研究者にネット電話をかけた生徒もいるというのだ。
ただ、インターネット学習には誤った書き込み情報を生徒が信じてしまうかもしれないなど、様々な問題がある。
同校では絶えず教師が生徒のそばにつき注意を払うようにしている。
ドゥラマンさんは「教科別に知識を詰め込むより、自分で課題を見つけ、解決する知恵こそ必要。将来はこうした教育が主流になる」と話す。
同校は数年内に生徒を500人まで増やす予定だ。(オランダ 三好益史)