ソニー生命保険が全国の中高生を対象に、将来なりたい職業などに関するアンケート調査を実施し、結果を公表した。
【アンケート結果】
男子中学生の将来なりたい職業の1位にはITエンジニア・プログラマーが選ばれ、2位にはゲームクリエイターが続いた。特筆すべきは3位に「You tuberなどの動画投稿者」が選ばれたことだろう。これは女子中学生の将来なりたい職業でも10位に選ばれており、動画投稿を行う発信者になりたいと思う子どもが増えているという点で興味深い点である。
女子中学生のなりたい職業の1位には「歌手・俳優・声優などの芸能人」が挙げられており、これは近年のAKB48等のようにアイドルが身近となり、地下アイドルのように個人で活動するアイドルも増えるなどしたアイドルブームに象徴されるように、東京に限らず、地方でも芸能人として小中学生の頃から活躍する同年代が増え、テレビでよく見かけるようになったことも起因しているのではないだろうか。
現在、You tubeに限らず、現在は様々な方法で自分の発信したい動画を配信することができる。ニコニコ動画を利用したニコニコ生放送やツイキャスという方法を使うと、誰でも気軽に不特定多数の人たちに情報を発信できるのである。
YouTubeは一時期「好きなことで生きていく」というキャッチコピーでテレビコマーシャルを行うなど、動画配信に関して積極的にPRを行っていた。このテレビCMには中高生に人気の「ヒカキン」や「はじめしゃちょー」といった人気ユーチューバーを起用し、YouTubeでの動画配信というコンテンツを世に広めた。
現在ではYouTubeに限らず多くの動画配信コンテンツがあり、スマートフォンさえあれば誰でも簡単に動画配信ができるようになっている。そして、特に中高生の間で動画配信を行うことが増えてきたのである。
動画配信を行うのには、大きく2種類の動機があると考えられる。一つは自己承認欲求。もう一つは動画広告料である。
動画配信に限らず、現在はTwitterをはじめとする多くのSNS(ソーシャルネットワークサービス)には、「イイネ」というように、他者に評価されるシステムが組み込まれている。SNSへの発信に対しても、この評価が集まるように、ウケが良いものを積極的にあげ、イイネが集まらないと焦燥感を持つ子どもも多い。反対にこの評価が高まることで、自己承認欲求を満たす傾向にあるようだ。これと同様に、動画配信には閲覧数という指標がある。閲覧数が多ければ自分が注目を集めているという指標になり、自己承認欲求が満たされやすいのである。
YouTubeのように動画配信を行うことができる媒体には広告が出る。そして閲覧数が多いページにはそれだけ多くの広告が出るため、閲覧数の多い動画配信者には、それだけ多くの広告料が支払われるのである。動画再生回数が1日に270万回を超えると言われる「ヒカキン」の広告収入は、年間で1億円になるという推計もある。こういった情報もあり、中高生に限らず多くの層で「閲覧数が取れる動画はお金になる」という思考が働き、閲覧数を多く集める動機づけとなっているようである。
どちらも「閲覧者数を集める」という共通目的がある。この閲覧者を集めることが非常に難しいのである。頑張って動画を配信すれども閲覧者が集まらず、徐々に配信内容が過激になっていってしまう傾向がある。それは、過激な内容であればファン・アンチ分け隔てなく閲覧者が集まりやすい傾向にあるからである。そして、やって良いことと悪いことの判別が曖昧になり、犯罪に至るケースや、危険な目に遭ってしまうことがある。
長野県の善光寺参りでドローンが落下し事件となったものも、15歳の少年が行ったものである。この少年は他にもドローン飛行が禁止されているエリアでドローンを飛ばしたり、犯罪が起こった地域で加害者の自宅を動画配信したりするなど、モラルにもとる行為をたびたび重ねていた。
他にもスーパーの商品にいたずらをする様子を動画配信した若者や、若者ではないが、コンビニのおでんを指でつついたり、宅配業者へチェーンソーを持って入ったりした動画配信者のニュースは記憶に新しいのではないだろうか。
数年前にはTwitter上にコンビニのアイスケースに入った画像や蕎麦屋の食器洗浄機の中に入った画像などがアップされ社会問題となった。媒体が画像から動画になっただけで、その本質は変わっていない。どちらも、より多くの人に見てもらいたいという衝動が誤った方向へ進んだ結果である。
ネット上の情報はすぐに複製・拡散され、回収不能なものになる。実際に上記のような過去の事件もネットで調べれば、どこの誰がその行為を行ったのかがウェブ上に残っており、おそらく永遠に消えることは無いだろう。
ネット上では現在行っている行為を直接咎める人はおらず、罪の意識が無いままに犯罪行為を行ったり、迷惑行為を行ったりしがちである。そして、それがネット上で拡散して初めて、取り返しがつかない事態に陥ったことを知ることになる。
中高生はTwitter上で現実の友人とも繋がることが多く、自分自身の発信した情報だけでなく、友人の情報からも個人情報が特定されることがある。そういったリスクをしっかりと知ることが必要である。
東京都では、SNSルールの策定なども行っており、ネットを利用する中の危険性を知らせる取り組みが行われている。家庭内でもネット利用に関する注意喚起を行う必要がある。保護者世代は学生時代に動画配信など行うことが無かったため、適切な指導ができない可能性もあるが、ネット上での情報流出などによる事件などを説明すれば、ネットの恐ろしさが少しは分かるかもしれない。
学生家庭教師の体験談などあれば、より信ぴょう性の高い話が聞けるかもしれないので、学習進度に余裕があるときは家庭教師に協力を仰ぐのが良いかもしれない。